仙台高等裁判所秋田支部 昭和29年(う)55号 判決
原判決引用の検察官および司法警察員に対する被告人木種の第一回供述調書によれば被告人木種は昭和二二年八月から藤崎町土木建築係技手として土木建築関係の設計、工事の監督、工事代金の支払、およびこれに附帯する一切の事務的な仕事をする職務を有していたのであるが、昭和二五年度藤崎中学校第三次増築直営工事施工の実際は藤崎職工組合が請負つたのであるから、工事代金請求に関する書類は同組合で作成すべきところ、同組合は事務員を頼んでその仕事をさせることをしないで被告人は工事開始にあたり、助役三浦政助にはかり、同人から役場で作つたらよいだろうといわれ、これにより工事代金請求に関する書類の作成は被告人木種の土木建築係としての職務上の仕事となつたこと翌二六年度藤崎町々営住宅新築直営工事施工の実際も藤崎職工組合において請負つたのであるが、このときも同組合において工事代金請求に関する書類の作成をする模様がないので、被告人木種は同工事開始の際、三浦助役にはかつた結果、前回同様被告人木種の職務の一部として同組合名義の工事代金請求に関する書類を作成することになつたことが認められ、また被告人木種は当然自己の職務として工事代金請求に関する書類を調査して上司の決裁を仰ぐべきであることが認定できる。そして被告人木種の前記各供述調書、検察官に対する藤田徳太郎、天内慶太郎、野呂定一三浦清一の各第一回供述調書によれば、被告人木種は(一)昭和二五年一一月下旬頃藤崎職工組合の相談役三浦清一から藤崎中学校第三次増築工事の工事代金の支払等に関し種々尽力したことに対する謝礼として現金一万円の供与を受け(二)昭和二六年一一月二一日頃藤崎町々営住宅新築工事を実施した同組合の組合長藤田徳太郎、副組合長天内慶太郎および会計係野呂定一から前回趣旨のもとに現金二万円の供与を受けた事実を認めることができる。
被告人木種が原審公判廷において「請負金額によつて工事請負内訳書を役場に提出しなければならないのですが、組合員の中にはその内訳表を作れる者がなかつたので、私が作りました。また毎日の材料の受払簿や人夫の出面簿を記入したり更に週一回とか月一回職業安定所や労働基準局に出す書類を作つてやりました。その仕事は組合から頼まれました」と述べており、これらの事務は被告人木種の職務外の仕事であつたことは所論のとおりである。したがつて藤崎職工組合の三浦清一、藤田徳太郎等が原判示のように被告人木種に贈与した各金員は一面被告人木種の右職務外の仕事に対する謝礼の意味も含まれていることは疑ない事実ではあるが、三浦清一藤田徳太郎等は他面同組合の工事代金請求に関し被告人木種のなした職務行為に対する謝礼の意味も包含して原判示各金員を供与していることは前記説明のとおりであるから、職務外の仕事に対する謝礼の意味が含まれていたとしても、これをもつて被告人木種の収賄罪の成立を妨げることはできない。
また原審証人天内慶太郎は「被告人木種に二万円をやることにした理由は組合が同人から五万円借用したからです」と述べていることは所論のとおりであるが、右二万円には被告人木種の職務行為に対する謝礼の意味もあることは前記説明のとおりであるから五万円借用に対する謝礼の趣旨もあつたからといつて、同被告人の収賄罪の成立に影響がない。
なお被告人両名が収受した金員には被告人両名の職務外の好意ないし仕事に対する謝礼の意味があつても、一面被告人両名の職務に対する賄賂の意味もあつて、それが不可分である場合、収受した金員の金額について賄賂性を認むべきものと解するを相当とする。
以上説明のとおりであつて、原判決には事実誤認の違法はなく、論旨は採用できない。